分包ミスした薬剤をバラしたあと、ドグマチールカプセル50mgを誤ってニトロールRカプセル20mgの瓶に戻してしまうミスが発生
■作成日 2018/4/23 ■更新日 2018/5/8
薬剤師ならば多かれ少なかれ経験したことがあるだろう調剤過誤。職業柄避けて通れない自らのミスから、医師の処方ミスまで要因は様々です。このコーナーでは、薬剤師の皆様が調剤過誤、そして調剤事故に少しでも遭遇しないよう、他の薬剤師さんが実際に経験した「調剤過誤にまつわるヒヤリ・ハット事例」を物語でご紹介しています。
私は30歳代半ばの薬剤師です。現在勤務しているのは、総合病院の門前薬局です。
総合病院から発行される処方せんは1日に40枚程度なのですが、週に3回、近隣のケアアウスや養護施設などに薬を配達するので、1日の処方せん枚数が80枚近くになる時もあります。
常勤の薬剤師は私のほかに2人いますが、施設の薬が処方される日は非常に忙しく、一般の患者さんのための調剤と施設用の薬の準備でてんてこ舞いになります。
今回の調剤過誤(正確にはインシデント)が発生したのは、施設の薬が処方されている日の昼から夕方にかけてのことでした。
その日、私は施設用の薬を調剤する当番でした。施設の薬はほぼ全処方に一包化の指示が入っているため、私は散剤を分包しつつ、錠剤を全自動錠剤包装機で分包する作業を1人でこなしていました。一方で、一般の患者さんの薬に関しても、一包化の指示が入っている場合や散剤が処方されている場合には私が調剤することになっていました。忙しくて眼が回りそうでしたが、私が分包機を独り占めしているので仕方がありません。
そして、私が施設用の薬の一部を手撒きでタブレットカセットにセットし、シャッタースイッチを押した時に、一包化の処方が持ち込まれました。
私は呼び出していたデータをいったん削除し、持ち込まれた処方のデータがレセコン入力されるのを待ちました。処方せんを確認したところ、手撒きでセットが必要な薬剤があることがわかったので、私は該当薬剤をタブレットカセットにセットしました。
その後、入力されたデータに間違いがないことを確認し、スタートボタンを押しました。しかし、錠剤包装機の中には先にセットした薬剤が入っていたのです。そのため、処方にはない薬剤が一緒に分包されてしまいました。
「あー、やっちゃった…。」と思いながら、私は分包ミスした薬剤を回収し、持ち込みの処方せんの薬剤を一包化し直しました。
作り直した薬剤の監査と服薬指導を他の薬剤師に任せ、私は再び施設用の薬を準備する作業に戻りました。さらに準備のあいまに分包ミスした薬剤をバラし、薬剤ごとにわけて瓶や錠剤包装機のカセットに戻しました。
しかしこの時、私はドグマチールカプセル50mgを誤ってニトロールRカプセル20mgの瓶に入れてしまっていたのです。
2つの薬剤が混在していることに気がついたのは、その日の夕方。配達前に一包化された薬剤を監査していた時に発覚
ドグマチールカプセル50mgがニトロールRカプセル20mgの瓶に混在していることに気がついたのは、その日の夕方のことでした。私が準備した一包化の薬剤の監査をしていた薬剤師が
「ねぇ、分包間違ってるよ。ニトロールRじゃなくてドグマチールカプセルが入っている。」
と言ってきたのです。
さらに「あれ?ニトロールRがちゃんと入っているのもある。どういうこと?」と困惑気味につぶやいたのです。
私たちの薬局では、ニトロールRカプセルは手撒きでドグマチールカプセルは錠剤包装機のカセットから落ちてくることになっています。そのため、両剤が混在することは通常ならばありえません。
おかしいと思いつつ分包し直したのですが、再分包した薬剤を監査していた薬剤師が
「やっぱりなにかおかしいよ。またドグマチールカプセルが入っている。」
と言ってきたのです。
そこで、私ともう1人の薬剤師でニトロールRカプセルの入っている瓶を確認しました。すると、ドグマチールカプセルがいくつか混入していることがわかったのです!もちろん私には心当たりがありました。分包ミスをした薬剤の中にニトロールRカプセルとドグマチールカプセルがあったのを覚えていたからです。
「すみません。さっきバラした薬の中にニトロールRカプセルとドグマチールカプセルがあったから、戻し間違えたんだと思います。」
と私はすぐに謝りました。
そして、ニトロールRカプセルの瓶からドグマチールカプセルをより分け、さらにドグマチールカプセルが混入してしまった2回分の調剤済み薬剤からドグマチールカプセルを拾い集めました。
混入してしまったドグマチールカプセルは1日3回1回1カプセル×28日分だったので84カプセルです。最後の一つを見つけた時は、ふぅっとため息が出てしまいました。
私がドグマチールカプセルをより分けている間に、もう1人の薬剤師は今日1日の処方内容をチェックしてくれていました。そして、一包化でニトロールRカプセルが処方されていたのは、私が調剤ミスをした施設の患者さん1人だけであることがわかりました。
今日はたまたま1人だけでしたが、日によっては一包化指示の入ったニトロールRの処方が重なることもあります。運が良かったと思ったものの、他の薬剤師には非常に迷惑をかけてしまいました。
私のミスを深く責めず、だまって面倒な作業に協力してくれた同僚に本当に感謝しました。
今回の過誤はどうすれば防ぐことができたのか
今回のミスは、まず私が分包ミスをした薬剤をバラす時に、処方せんをしっかり確認せずにバラしたことに大きな原因があると考えます。
本来ならば、分包ミスに関わった2つの処方せんの内容をチェックしながら薬剤をより分けるべきでした。しかし、一般の患者さんの処方せんのコピーは監査者と服薬指導者に渡してしまい、手元にあったのは施設の患者さんの処方せんのみでした。
また、2つの処方にいくつか同じ薬剤が処方されており、バラした薬剤の数が非常に多くなってしまっていたことから、より分けたあとの薬剤の数の確認をおこたってしまいました。さらに、これらの作業を他の作業をしながら行ったので、ケアレスミスもあったと思います。
今後、このようなミスをなくすためには、処方せんを確認しながら薬剤をバラさなければならないと考えます。そして薬剤をより分けたあとには、必ず数もしっかり確認しなければならないと思っています。
さらにバラした薬剤は、バラした本人ではなく第三者が1剤ずつ刻印などを確認する必要があると思います。この時、処方せんを見ながら薬剤を確認し、数のチェックを同時に行うことも必要でしょう。
確かに、1剤ずつ監査をするのは大変です。特に、ワーファリン錠1mgがいくつも処方されている場合や、同じような色・大きさの半錠がいくつも分包されている場合には監査に非常に時間がかかります。
そのような場合は、薬剤を10の倍数、あるいは7の倍数ずつ別のトレーなどに入れ、少しずつ監査すれば良いと思います。小分けにしてあれば見やすいですし、薬剤数の計算もしやすくなります。なお、これらの作業は患者さんの少ない時間帯に、薬剤師が複数いる状態でやるべきであると考えます。
今回も、私が他の薬剤師の手を借りて確認をしてもらえばよかったのですが、監査や服薬指導を任せっきりにしていることが後ろめたく、すべての作業を1人で行ってしまいました。しかしその結果、薬剤の戻し間違いが生じ、余分な業務が発生してしまいました。
分包ミスした薬剤を放置しておくことはあまり好ましいことではないと思いますが、これからは時間のある時に集中して、そして他の薬剤師と協力しながらバラした薬剤を間違いなく選別しなければならないと思っています。
また、薬剤を瓶などに戻す時には、薬剤名を声に出し、第三者に確認してもらいながら戻さなくてはならないと考えます。今回は瓶への戻し間違いでしたが、分包機のカセットに間違った薬剤を充填してしまうと、調剤過誤はもちろん機械の故障の原因にもなりかねないので気をつけなければなりません。
分包機のカセットに本来の薬剤より大きな薬剤をセットした場合、そもそも薬剤が機械から排出されずエラーが出るのみです。しかし小さな薬剤は分包紙内に落ちてきてしまうこともありますし、カセットの排出部分に引っかかって故障の原因となる可能性もあります。
さらに、カプセル剤の場合、カプセルの規格が同じだとカセットに引っかかることなく排出され分包されてしまいます。
分包されている薬剤が明らかに異なれば監査時に気づきますが、今回のドグマチールカプセル50mgとニトロールRカプセル20mgのように色も大きさもよく似ていると、監査時に見つけられない可能性も否定できません。
両カプセルは、長さが1mmちょっと違いますが太さは0.5mmくらいしか違いません。カプセルの色調はほとんど同じですし、印字されている文字の色調も非常によく似ています。これでは目の悪い患者さんが薬剤を判別することはできません。
今回のような過誤・インシデントを防ぐために、今後は薬剤を戻す時・充填する時には必ず第三者にチェックをしてもらわなくてはならないと考えています。
今回の調剤過誤が発生したのは、手間のかかる作業を他の作業と同時進行で行ったことも原因だと思います。
分包ミスがあると、どんな薬剤師でも多かれ少なかれ動揺があると思います。その状況下で煩雑で手間のかかる作業を行えば、次のミスを誘発する可能性は非常に高くなります。ましてや、他の作業と同時進行となれば、調剤過誤やインシデントがいつ発生しても不思議ではありません。
これからは、急を要しない作業・手間のかかる作業は、時間のある時に余裕を持って行いたいと思います。
例えば、今回のように分包ミスをした場合、ミスした薬剤をあわててバラすのではなく、気持ちを切り替えて調剤に集中し、新たに分包し直すべきであると考えます。
もちろん、薬剤の在庫状況などによっては分包ミスした薬剤をすぐに再利用しなくてはならないこともあります。そのような場合であっても1人で作業をするのではなく、適宜他の薬剤師の手を借り、複数の目で確認・監査しながら業務を行うのが良いでしょう。
患者さんの待ち時間が長くなるようであれば声がけをし、患者さんおよび調剤者のストレス軽減もはかる必要があると思います。
その他、全自動錠剤包装機の錠剤カセットへの薬剤充填や散剤の充填も、可能であれば余裕のある時に行うのが良いと考えます。錠剤カセットについては先に充填したものから薬剤が排出されるので、吸湿性がよほど高いものでなければ余裕を持って充填しても大丈夫だと思います。
一方、散剤の充填については、残薬の上に新たな薬剤を重ねることはいささか抵抗があります。回転が良いもの、ロットが同じものであれば良いかもしれませんが、そうでないものは充填しづらいです。
そこで、薬剤の包装単位が大きく充填頻度の高いものについては、散剤瓶を2つ用意しておくと良いと思います。実際、私の勤務する薬局では酸化マグネシウムとパントシン散20%の充填頻度が高いので、これらは散剤瓶を2つ用意しています。
2つの散剤瓶が同時に空になってしまうということはまずないので、薬剤充填のためにあせってしまうということはありません。もちろん、空になった散剤瓶の補充は時間に余裕がある時に行っています。
また、小量で瓶詰されている包装規格がある薬剤については、小包装品に切り替えると良いと考えます。例えば、アレルギン散1%は500gの缶入り包装と100gの瓶入り包装があります。
アレルギン散は充填時にふわふわ舞い上がってしまうのでいつも苦労していたのですが、他薬局の薬剤師のアドバイスで100gの瓶入り包装に変更したところ充填の手間がなくなり、本当に楽になりました。
また、ムコダインDS50%も500gの大包装と100gの小包装がありますが、小包装に変えたところ他の薬剤師に非常に好評でした。私の勤務する薬局では、小児科の約束処方で両剤が頻繁に処方されるので、充填の手間がないだけでもだいぶ作業が楽になります。
その他の散剤に関しても、充填頻度などを考慮しながら必要に応じて小包装への変更を考えていきたいと思っています。
作業ステップが多いほどヒューマンエラーの発生頻度は高くなります。これからは作業ステップを減らす努力をし、どうしても減らせない部分については複数人体制でチェックを行い調剤過誤の発生を防ぎたいと思います。
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